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相続時精算課税とは?

 平成15年1月1日より、相続時精算課税という制度が創設されました(相法21の9)。この制度は、消費を拡大するため、親から消費をする子の世代への贈与をスムーズにするようにという目的でつくられたのです。
 生前に贈与をした場合には贈与税が軽減しますが、その代わりに相続のときには、贈与された財産と相続された財産を足した額に相続税がかかる、という制度です。
 ただし、この制度の適用対象は原則として、65歳以上の親から20歳以上の子供(子供が亡くなっているときには20歳以上の孫を含みます。相基通21の9−1)への贈与に限られています(年齢は贈与の年の1月1日現在のもの)。なお、住宅資金贈与の場合、親の年齢は関係ありません。また、いったん相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者については従来からある110万円まで非課税である暦年課税制度には戻れません。
 もちろん、相続時精算課税制度を利用せず、従来どおりの暦年課税制度によって贈与税を支払ってもかまいません。従来の方法で税金を払うか、新しい制度を選択するかどうかは、贈与される子供が決めることができます。また、父母ごとに選択が可能ですので、父親からの贈与は相続時精算課税制度を利用し、母親からの贈与は暦年課税制度を利用するということをしてもかまいません。ただしこの場合、父親からの贈与についてはいったんこの制度を選択すれば二度と暦年課税に戻ることはできません。
 相続時精算課税制度を適用したい人は、贈与税を申告するときに、「相続時精算課税制度を利用します」と税務署に届け出る必要があります(相続時精算課税制度選択の届出書)。
 相続時精算課税制度を選択すると、贈与しても、2500万円までの財産には税金がかかりません(相法21の12)。また、2500万円を超えても、一律20%の贈与税がかかるだけです(相法21の13)。
 2500万円の特別控除額(相法21の12)とは、財産をもらう人が一生でもらえる財産の総額であり、贈与の回数は何回あってもかまいません(前年以前に、この特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります)。
 

相続時精算課税制度の導入された趣旨

 相続時精算課税制度を理解しようとするならば、まず、導入された趣旨というものを明確に理解する必要があります。わが国では、高齢化が進んでいるが故に、相続による次世代への資産移転の時期が従来よりも大幅に遅れています。そのため、生前における贈与による資産の移転の円滑化を促進し、結果的に、経済社会の活性化をする必要があったということです。それ故に、相続時精算課税制度というものが導入されたのです。
 若い世代へ、資産を円滑化に移転するという意図があるために、この制度はシステム的によくできています。例えば、贈与者は65歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子とされています。これは、年金制度とリンクをしているということです。また、特別控除額2,500万円は、家族4人をモデルにして設けられた金額ということです。つまり、一家の長お父さんが亡くなった場合、お母さんと子供2人が法定相続人となるため、基礎控除額が8,000万円となります。1人あたりの金額は8,000万円÷3のため、2,666万円となり、キリがいい数字ということで2,500万円というわけです。相続時精算課税制度とは、実によく考えられて作られた制度だということがわかります。
 

「相続時精算課税制度の贈与」と「暦年課税(通常)の贈与」の比較

 
  相続時精算課税制度 暦年課税制度
通常の贈与(110万贈与)
贈与者 65歳以上の親(住宅取得資金の場合、年齢制限なし) 制限なし。親族間のほか、
第三者からの贈与を含む。
受贈者 20歳以上の子供(代襲相続人を含む) 制限なし


非課税枠 贈与をする人ごとに生涯にわたり2,500万円(特別控除額)。 贈与を受ける人ごとに毎年、年間110万円(基礎控除額)
税金 (貰った価額−2,500万円)
 ×20%
(貰った価額−110万円)
 ×超過累進税率
計算期間 届出後相続開始まで 暦年(1/1から12/31)
申告 非課税枠内でも、適用を受ける子供は、贈与を受けた翌年の2/1から3/15までに申告 非課税枠内であれば、申告不要(配偶者の特例の場合、申告必要)
納付 贈与税がある場合は納付し、相続時に精算 贈与時に完了


税金 相続財産に贈与財産(贈与時の価額)をプラスして相続税の計算をする 贈与財産は、相続税の計算には関係しない。ただし、相続開始前3年以内に贈与した財産は相続財産にプラスして相続税の計算をする
贈与財産
の価額 
贈与時の価額(時価) 贈与時の価額(時価)
過大贈与
税額
還付
節税効果 ない。2500万円の非課税枠はあるが、すべて相続時に合算されて相続税がかかる。ただし、贈与時の価額で合算されるため、その財産が相続時に値上がりしていれば、間接的に節税になる。 ある。贈与財産は、相続時に計算の対象外になる。よって、その分は、財産を少なくし、結果的に相続税が安くなる。
メリット 一度に大型贈与がしやすい 相続財産を減らすことが可能。結果的に相続税が安くなる。
デメリット 相続税を安くすることができない。また、一度この制度を選択すると、その贈与者については、暦年課税制度が使えなくなる。 一度に大型贈与がしにくい
 

 

 

相続時精算課税(一般)

 この制度では子供1人につき、2500万円まで(贈与財産の種類、目的や使途は問わない)は親が贈与しても、子供には贈与税がかからないのです。また、2500万円を超えた金額に対しても一律20%の贈与税がかかるだけです。
 これがどのくらい安いかといいますと、従来の方法で2500万円の贈与を受けると贈与税額は970万円となり、ほぼ40%の税金になります。それが新しい制度の場合、贈与税額は0円になります。
 2500万円の特別控除額(相法21の12)とは、財産をもらう人が一生でもらえる財産の総額であり、贈与の回数は何回あってもかまいません。前年以前に、この特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。
 
 (例)平成16年度にこの制度を選択して2000万円の贈与を受け、平成17年度にさらに1500万円の贈与を受けた場合の贈与税額は、いくらになるでしょうか?
 (答)平成16年度 2000万円−2500万円=0円
    贈与税額0円 特別控除額の繰越500万円
    平成17年度 1500万円−500万円=1000万円
    贈与税額   1000万円×20%=200万円
 
 ただしこの制度は、満65歳以上の親から満20歳以上の子供への贈与に限られています。ポイントは、年齢制限と親子間の贈与だということです(その他にも細かい条件はいくつかあります)。
 この制度における最大の注意点は、この制度を利用した贈与の場合、親の相続のときには相続財産の他に贈与した財産も含めて相続税の計算をしなくてはいけないということです。
 もちろん、2500万円を超えた金額に対しては一律20%の贈与税がかかるのですが、そのときに支払った贈与税は、相続のときの相続税から控除はできます(詳しくは贈与税額控除のページまで)。ですから、税金を二重に払うようなことはありません。
 この制度を別のいい方をして説明すると、生前の贈与はなかったものとされ、再度相続税を計算し直すということです。サラリーマンの給料に置き換えるならば、生前に支払った贈与税は給料から天引きされる源泉税のようなものであり、再度相続税を計算し直すことは年末調整をするようなものです。
 

相続時精算課税の適用手続

 相続時精算課税を選択しようとする受贈者(子)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出することとされています(相令5)。なお、提出期限を過ぎてから提出した場合は、相続時精算課税の適用を受けることはできません(相基通21の9−3)。
 この選択は、受贈者である兄弟姉妹が各々、贈与者である父、母ごとに選択でき、最初の贈与の際の届出により贈与者の相続時まで継続して適用され、途中で、110万円まで非課税である暦年課税に変更することはできません。
 相続時精算課税選択届出書の記載事項は、相規10に記載されています。また、相続時精算課税選択届出書の添付書類については、相規11に記載されています。
 

相続税の申告義務

 相続時精算課税の適用を受けた場合、贈与者(親)が死亡したときには、贈与者から贈与を受けた相続時精算課税適用財産も相続財産に加算して相続税の計算を行います。この計算の結果、相続税の基礎控除額以下であれば相続税の申告は必要ありません。なお、相続税の申告の必要がない場合でも、既に納めた相続時精算課税適用財産に係る贈与税がある場合には、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
 

相続時精算課税制度の落とし穴

 相続時精算課税制度とは、資産の移転、すなわち遺産の前渡しであるため、このことを原因として将来遺留分の侵害というトラブルが起こりえるということです。
 また、移転された資産を、受贈者が全部使い切っちゃった場合、将来の相続税の納付の際、相続税を払えない場合もありえます。すなわち、この場合、他の相続人に連帯納付を求められる場合もあるということになります。
 

相続時精算課税(住宅)

 相続時精算課税(住宅)については、相続時精算課税(住宅)のページまで。
 

相続時精算課税

 相続時精算課税を詳しく知るためには、相続時精算課税制度のサイトまで。
 

   
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