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相続放棄と限定承認とは?

 「亡くなった人のマイナス分は背負わなくてもよい」という制度のことです。
 相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切相続しないという方法です。
 限定承認とは、相続を受けた人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという方法です(民法922)。
 

相続放棄と限定承認の内容

 財産を持っている人が亡くなった場合、その人の財産は子供などの相続人が相続することになります。
 しかし、財産とは、現金や土地などのプラスの財産だけをさすわけではありません。マイナスの財産、つまり借金なども財産に含まれます。財産を相続する場合、相続をする人は、プラスの財産もマイナスの財産も全部相続しなくてはなりません。ですから、亡くなった人に借金があれば、その人の財産を相続した人は、亡くなった人の借金を引き継ぎ、支払うことになります。
 亡くなった人の財産が、マイナスの財産よりプラスの財産のほうが多いのであれば、相続を受ければ得になるので、相続を受けるのを拒否する人は少ないでしょう。この場合、相続人は全財産をすんなり相続することが多いです。
 このように、プラスの財産もマイナスの財産も、全財産を無条件に引き継ぐことを、単純承認といいます(民法920)。
 しかし、亡くなった人の財産が、プラスの財産よりマイナスの財産のほうが多い場合はどうでしょうか。誰でも、借金の肩代わりはしたくないというのが本音でしょう。こういった場合、相続人もすんなり全財産を無条件に引き継ごうと思わないものです。
 そういった人のために、「亡くなった人のマイナス分を背負わなくてよい」という制度があります。これには相続放棄もしくは限定承認の2つの方法があります。
 

相続放棄

 相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切相続しないという方法です。財産はすべてもらわないので亡くなった人の借金も払いません、ということです。プラスの財産よりマイナスの財産のほうがはるかに多く、マイナスの財産を返すことができないということが明らかな場合は、相続放棄をしたほうがよいでしょう。
 相続放棄さえすれば、親の借金でも、子供が支払う必要はまったくありません。親の借金を子供が肩代わりしなくてもよいのです。
 相続放棄をする場合は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所に申告しなければなりません(民法915民法938)。
 申し出がないと認めてもらえませんので、注意が必要です。実は、この制度はあまり知られていないため、ほとんどの人が3ヶ月を何もせずやり過ごしてしまい、全財産を無条件に引き継ぐ単純承認になってしまうケースが多いのです(民法921)。
 相続放棄は、相続人が個人で、相続するかしないか決めることができます。何人もいる相続人のうちの1人だけが相続放棄をすることも可能です。
 また、相続放棄をするかしないかは、相続を受ける人が決められます。例えば、亡くなった夫が「すべての財産は妻にあげます」と遺言をしても、妻が「いや結構です、いりません」といえば、相続放棄をすることができます。
 なお、「相続を放棄した人」は初めから相続人でなかったものとされます(民法939)。「相続を放棄した人」とは、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述して相続の放棄をした人のことをいい、正式に放棄の手続きをとらないで、事実上、相続により財産を取得しなかった人はこれに該当しません(相基通3-1)。
 

限定承認

 限定承認とは、相続を受けた人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという方法です。この方法は、マイナスの財産(借金)の金額がプラスの財産より明らかに多い場合や、わかっていない借金が残っている可能性がある場合などに有効です。
 いざ、相続をするとなっても、プラスの財産とマイナスの財産と、どちらのほうが多いのかわからないということは十分ありえます。後になってから多額の借金が見つかり、プラスの財産よりマイナスの財産のほうが多い場合もあります。
 しかし、限定承認をしていれば、相続したプラスの財産より多いマイナスの財産の部分は返さなくてもかまわないのです。また、結果的にマイナスの財産よりプラスの財産のほうが多かったとしても、財産はそのまま引き継げます。ですから民法上は、かなり便利な制度といえます。
 限定承認を選択する場合も、相続放棄と同じように、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に被相続人の住所地の家庭裁判所に申告する必要があります(民法915民法924)。相続放棄同様に、やはり申し出がないと認めてもらえません。
 ただし、相続放棄と違って、限定承認の場合は、相続人の全員が共同で申請しなくてはいけません(民法923)。相続人のうち一人でも「限定承認はイヤだ。私は単純承認がいい」といえば、他の相続人も限定承認ができなくなりますので注意をしてください。
 なお、相続人のうちの誰かが相続放棄をしていても、その人以外が同意すれば、限定承認の申告をすることができます。

 
限定承認  

限定承認の落とし穴

 前述したとおり、限定承認とは、相続を受けた人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという方法です。ですから民法上は、かなり便利な制度といえます。ただし税法上は、非常に危険な落とし穴があります。
 被相続人(亡くなった人)に対して、財産を時価で相続人に渡したとして「みなし譲渡所得課税」がかかるのです(所法59)。
 「みなし譲渡所得課税」とは、文字どおり譲渡所得があったとみなして、税金をかけるということです。被相続人に対して、すべての財産を時価で売却し収入があったとみなし、その財産の取得費などを差し引いた所得に対して所得税がかかります。そのため、含み益がある財産(例えば、購入したときより値上がりしている土地)がある場合、限定承認をすると、被相続人に対して所得税がかかることになります。なお、現金の場合、含み益がありませんので、「みなし譲渡所得課税」は、かかりません。
 相続人は被相続人の所得税について、準確定申告をもって所得税の申告・納付をします(詳しくは、準確定申告のページまで)。また、相続人は財産を時価で取得したことになります(所法60)。
 
 
 もちろん、被相続人に対しての所得税は債務となりますが、その増額した債務は限定承認の手続きによりプラスの財産を超える場合は切捨てされます。そのため、被相続人がプラスの財産よりマイナスの財産のほうを多く持っている場合は、相続人において基本的にデメリットはありません。
 ただし、被相続人が明らかに、マイナスの財産よりプラスの財産のほうを多く持っていれば、所得税の分だけソンをすることになります。限定承認は、濫用すべき制度ではないということです。
 
 
 
 

相続放棄、限定承認をすべき期間

 相続放棄、限定承認とも選択する場合は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に被相続人の住所地の家庭裁判所に申告する必要があります。ただし、3ヶ月以内では判断をすることが難しいこともあるでしょう。その場合は、家庭裁判所に申告することによって、期間を延長することができます(民法915)。
 

相続放棄と限定承認のまとめ

  
相続放棄と限定承認
 

   
運営 税理士・中島IT会計事務所/東京都港区